2007年度作品。アメリカ映画。
野心に燃えたフォークシンガー、時代の寵児のロックスター、ランボーに傾倒した詩人、一人の女性を不器用に愛した映画スター…。様々な顔を持つディランを描くためにハリウッド・スター6人が参加。全く新しいアプローチでボブ・ディランをスクリーンに浮かび上がらせる。
監督は「エデンより彼方に」のトッド・ヘインズ。
出演は「バットマン・ビギンズ」のクリスチャン・ベイル。「エリザベス」のケイト・ブランシェット ら。
ボブ・ディランにインスパイアされた作品ということもあってか、この映画にはボブ・ディランをモデルにしたと思しきキャラクターが登場する。それを反抗者としての要素、家族人としての要素、ホラか現実かはともかく少年期の要素といったように分割して描写している。
その発想自体はおもしろいし、ボブ・ディランの分身としてビリー・ザ・キッドを登場させるなど遊びの部分があることも悪くはない。
だがそれを行なうことで何を表現したかったかが見ていてもまったく伝わってこなかった。
各エピソードはどれも断片化されていて、互いのエピソードとの有機的なつながりがどうしても見えてこないし、演じる人物を変える必然性もわからない。おかげで退屈な印象しか受けなかった。
ボブ・ディランの人生を知っている人ならば、この映画を見て思うところはあるかもしれないが、たいていの人は僕も含め、ボブ・ディランの歌を知っているという程度ではないだろうか。
そんな多くの一般人に理解できず、マニアだけにしかわからない映画をつくる時点で、つくり手の創作姿勢と見識を疑ってしまいたくなる。
もちろん本映画には良い部分もある。
先にも触れたが、発想自体は悪くないし、音楽が世界を変えることはない、と語り、世界の変革を訴えるフォーク音楽に皮肉な態度を取っている部分もおもしろい。そしてケイト・ブランシェットの存在感はさすがといったところである。
しかし部分が光っていても、トータルの印象があまりに悪いため、美点がことごとく殺されてしまっている。独りよがりな作品にとどまってしまったのが残念な限りだ。
評価:★★(満点は★★★★★)
出演者の関連作品感想:
・クリスチャン・ベイル出演作
「ニュー・ワールド」
「プレステージ」
・ケイト・ブランシェット出演作
「あるスキャンダルの覚え書き」
「エリザベス」
「エリザベス:ゴールデン・エイジ」
「バベル」
・ヒース・レジャー出演作
「ブロークバック・マウンテン」
・ベン・ウィショー出演作
「パフューム ある人殺しの物語」
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